セブンイレブン小平喜平町1丁目店が閉店、20年の記憶


セブンイレブン小平喜平町1丁目店は、2005年4月1日にオープンした、東京都小平市の住宅街にあるコンビニエンスストアでした。
オープンからちょうど20年という節目を迎える2025年、5月29日15時、静かに営業を終えることとなりました。
- セブンイレブン小平喜平町1丁目店(店番:214741)
- 〒187-0044 東京都小平市喜平町1丁目11-2
- 開店:2005.4.1 → 閉店:2025.5.29(7,364日)
筆者は、2005年11月にアルバイトとしてこの店に入り、2008年6月からは初代店長として店舗を任されることになりました(2010年1月まで)。
その後、系列の店舗へ異動しましたが、2011年8月に再び喜平町1丁目店へ戻り、2013年8月まで勤務を続けました。

単なる「勤務先のひとつ」と呼ぶにはあまりにも濃く、思い出が詰まった場所です。
それだけに、この閉店をきちんと見届けたいという思いが自然と湧きました。
以下は私の回想録です。
セブンイレブン喜平町店との出会い

2005年11月。
大学を辞めて、何もすることがなかった私が、ふらっと始めたアルバイトがコンビニバイトでした。
近くにあった日立教習所に通っていて、そのついでのような感覚で応募したのを覚えています。
教習所で免許さえ取れれば、その後は特にバイトをする理由もなかったはずなのに、免許取得後も私はバイトを続けました。

理由のひとつは、オーナーの存在です。
かざらず、気取らず、でも芯のある人柄に惹かれました。
それまで出会ってきた大人とは、どこか違っていて。
そんな人のもとで働けることが、楽しかったのだと思います。

働きぶりを見てくれていたのか、次第にいろいろな仕事を任されるようになりました。
そして2008年、私は21歳で店長になります。
同年代の多くがまだ学生だったなか、学校を辞めていた私には、これをやるしかありません。
だからこそ「チャンスだ」と思って、飛び込みました。
でも、正直なところ、うまくはいきません。
人をまとめることよりも、自分の業務だけで精いっぱい。
リーダーとしての器には到底届かず、「悩むことも多かった」と今なら言えるけれど──

いや、実のところ、あの頃の自分は悩む余裕さえなかったのかもしれません。
ただ必死で、何が正解かもわからないまま、とにかく毎日を回すことだけで精一杯。
今こうして振り返ってみて、ようやく「あぁ、ぜんぜん足りていなかった」と思えるものです。
チームで走った日々──アルバイトと店長の垣根を超えた熱量

あの頃の喜平町1丁目店には、確かに“熱”がありました。
外せないのが、おでんの70円セール。
店内外をPOPで飾りつけ、スタッフ全員を巻き込んでキャンペーンを盛り上げたあの時期は、今でも鮮烈に思い出します。
「どうせやるなら全力でやろう」と、本気で取り組んだ結果、地区でダントツの販売数を記録し、全国でも8位にランクインしました。

装飾も尋常ではなく、POPが天井を埋め、ゴンドラの壁面が広告一色になるほど。
その様子が界隈では話題となり、近隣店舗のスタッフさんが見学に来るほどの盛り上がりでした。

もちろん、その熱気を保ち続けるのは簡単ではありませんでした。
正直、支える側の苦労もありましたし、自分ひとりでは到底できないことばかりでした。
でも、あの時のスタッフのみんなが本当に頑張ってくれたからこそ、できたことだと、心から思っています。
いま振り返っても、感謝しかありません。
もうひとつ印象に残っているのは、セブンイレブンで「チルド弁当」が試験販売されたときのこと。
今でこそ当たり前となったチルド弁当の販売ですが、当時は試験販売の真っ最中でした。
喜平町1丁目店はそのテスト店舗に選ばれ、販売データをまとめて提出したり、地区の発表会でスピーチをしたりと、貴重な経験をさせてもらいました。
チルド弁当を見ると、今でもあの頃のことを思い出してしまいます。
挙げればキリがありません。今の時代ではもう難しいと思いますが、売上や数字以上に、「このお店で何ができるか」をみんなで試行錯誤しながら作っていた、あの現場の空気感が鮮明に残っています。

退職、そしてそれでも続いた関わり

2013年8月、私は喜平町店を退職しました。
思うように仕事ができなくなったこと、体調を崩したこと、そしてずっと心にあった閉塞感。当時の自分自身には、限界が見えていました。

2度目の店長として再び喜平町に戻ってきたことには、複雑な思いがありました。
人事異動なのだから仕方がない──そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、心の奥ではねじれが生まれていきます。
次第に、
──溜息をつきながら「仕方がないじゃないか」と働いている店長に、果たして価値はあるだろうか。
という、問いも湧き上がってきました。
その問いに、私は当時も今も、はっきりとした答えを出せずにいます。

だから私は、ここに自分がこれ以上いても、お店のためにはならないかもしれない、そう思い、退職の決断をしました。
可能性の話をしても、過去は変わりません。「今ならもう少しうまくやれたかもしれない」と思うこともあるけれど、あのときの精一杯が、あのときのすべてだったのです。
その悔しさも、未熟さも、全部ひっくるめて持っていきたいと思います。
当時の皆さまにおかれましては、すみませんでした。
本当は、もっとやりたかった。
閉店の日、その場に立って思ったこと

あれから12年。2025年5月29日15時。
セブンイレブン小平喜平町1丁目店は、20年の歴史に静かに幕を下ろしました。
私は今となっては部外の者ですが、ここまで繋いでくれた縁のおかげで、その瞬間に立ち会わせていただくことになりました。

多くの人にとっては、ひとつのコンビニが閉店したという、それだけの出来事です。
でも、私にとっては、ひとつのコンビニという言葉だけでは表現しきれない、思い入れのある場所です。

これからは、そのバトンを勝手に引き継いで、喜平町店があったことを私がこの記事で伝え続けたいと思います。
約20年、お世話になった場所。地域のランドマークとして走り続けてくれた、喜平町店。ここでの日々があったからこそ、いまの自分があると自信をもって言うことが出来ます。

いいこともあったし、それだけじゃないこともあった。
なんか、全部その事実だけで十分です。
空っぽになった店内を見て、そう思いました。
もう退職して12年も経つ自分が言うのも変な話ですが。
どこかで「セブンイレブン小平喜平町1丁目店があったなぁ」と思い出して、この記事に辿り着いてくれたなら、それだけでも嬉しいです。
20年走り続けてくれたオーナーに最大の感謝と敬意を。
私の退職後、閉店までの13年間を支えてくれた三代目店長にも拍手を。
そして、ご来店いただいたお客様の皆さま、誠にありがとうございました。
セブンイレブン小平喜平町1丁目店
初代店長 佐々木葵
- セブンイレブン小平喜平町1丁目店(店番:214741)
- 〒187-0044 東京都小平市喜平町1丁目11-2
- 開店:2005.4.1 → 閉店:2025.5.29(7,364日)
- 歴代店長
2005.4~2008.6 オーナーが店長兼任
2008.6~2010.1 初代店長(1回目)
2010.1~2011.2 二代目店長
2011.2~2011.8 店長不在のためオーナーが店長兼任
2011.8~2013.8 初代店長(2回目)
2013.8~2025.5 三代目店長